[かわる天気予報](9)情報機器の普及で個性化 気象ビジネス多彩に(連載)

1996.XX.XX 東京夕刊 7頁 写有 (全1088字)


パソコンやファクスなど情報機器の一般家庭への普及に伴い、個人相手の気象ビジネスも続々と登場してきた。

 「週末、釣りに出かける前に風など釣り場の天気がわかるし、料金も安い」。東京・品川の会社員松清博貴さん(45)の趣味は週末の船釣り。気象情報サービス会社「ハレックス」(本社・東京)から、風や波などの気象情報や釣れる魚の種類や釣れ具合までファクスで送ってもらっている。

 三年前に設立した同社は、独自の天気予報はしないものの、生活やレジャーなどの関連情報とキメ細かな天気予報を組み合わせ、主に個人向けに提供している。情報の中身は、関東のゴルフ場別の天気予報から洗濯物の乾きやすさを示す“洗濯指数”までと多彩。企業を対象とした民間気象会社の独自予報は一般に料金が高く、個人では利用しにくいが、こちらは年会費三千円。四月からは気象予報士を目指す人向けの高度な気象情報の提供も始めた。

 民間気象会社では世界最大の「ウェザーニューズ」(本社・東京)では、一般の電話回線または通信衛星「スーパーバード」経由で、予想天気図、実況天気図などの気象情報をパソコンで受信できるシステム「dekitaくん」を販売している。

 千葉県立船橋東高では昨年九月から、地学の授業で天気予報の実習にこれを活用している。同システムの気象情報には局地予報は含まれない。そこで、生徒はシステムで受信した船橋市内のアメダス観測データや気圧配置などから、翌日の市内の天気を予測するのだ。

 生徒の四四%が「面白かった」と回答、担当の福島毅教諭は「実際に予報するには自分の頭で考えなければならず、生徒も授業をよく聞くようになった」と効果を語る。四月に転任した行徳高でも同システムの導入を計画中。

 ウェザーニューズ社では、とにかく安い価格設定にしようと、「一か月の料金をコーヒー一杯分の値段にした」。衛星を利用する場合でも、初期費用は十五万円だが、あとは年三千六百円(基本タイプ)で済む。

 さらに同社では今月から、インターネットで全国の週間予報や季節ごとの桜、紅葉の見ごろ情報などの提供も開始した。季節情報では同社独自の局地予報も提供する。費用は広告料金でまかなうので利用はタダだ。

 大手パソコン通信・ニフティサーブで天気予報を提供しているデータベース・サービス会社「ジー・サーチ」(本社・東京)の浅原雅晴営業部長は、「ニフティサーブの当社の天気予報へのアクセス数は前年度比で二倍」と推定、「気象関連情報なら何でも手に入れられるサービスを展開、テレビの予報などと差別化を図りたい」という。

 情報化社会では天気予報も個性的になっていく。(吉田昌史)

読売新聞社


 
 
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